東京女子医科大学医学部 放射線医学講座 放射線腫瘍学分野

放射線治療について

粒子線治療

粒子線治療とは

 放射線治療で通常用いられているのは高エネルギーエックス線ですが、粒子線治療とは、サイクロトロンやシンクロトロンなどの大型加速器から得られる陽子、炭素イオンなどの重粒子を用いた放射線治療です。
 利用する粒子の種類によって、陽子線治療、重粒子線治療、中性子線治療などにわけられます。
 現在、おもに行われているのは陽子線治療と重粒子線治療(炭素イオン線治療)です。これらの放射線は、一定の深さ以上には進まず、ある深さで最も強く作用する特徴があるため病巣に線量を集中させやすい利点があります。生物学的な効果は陽子線ではエックス線の1.1倍、重粒子線では約3倍です。
 粒子線治療は、2003年10月に高度先進医療として認可され、長らく臨床試験あるいは先進医療として行われていましたが、2016年4月以降、健康保険の適用となり、徐々に適用疾患が拡大しています。

陽子線治療

 線量の集中性が良く生物学的な効果はエックス線の1.1倍なので、従来のエックス線治療と同様に施行できることが利点です。
 頭蓋底腫瘍、頭頸部がん、肺がん、肝細胞がん、前立腺がん、小児がんなどで臨床使用され、最も多く使用されている粒子線です。
 2022年4月現在稼働中の国内の陽子線治療施設は、18か所、東京近辺では国立がん研究センター東病院、筑波大学陽子線医学利用研究センター、静岡がんセンターなどです。

重粒子線治療(炭素イオン線治療)

 線量の集中性が良く生物学的な効果が高いので、従来、放射線治療が苦手としていたがんにも有効です。
 例えば、骨肉腫などの骨軟部肉腫、悪性黒色腫や腺癌などの頭頸部腫瘍、眼の悪性黒色腫、膵がん、直腸がん術後局所再発、高リスク前立腺がん、局所進行子宮頸部腺がん、頭蓋底腫瘍などです。照射期間の短縮も可能で、I期の非小細胞肺がんでは1回、肝がんでは2回などの照射も行っており、前立腺がんでの3週間で治療できる。
 2022年4月現在稼働中の我が国の重粒子線治療は、7か所、東京近辺では量子科学技術研究開発機構QST病院、神奈川県立がんセンター、群馬大学粒重粒子線医学研究センターなどです。

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)

 点滴投与したホウ素化合物を取り込んだがん細胞の細胞内部で、ホウ素と照射された熱中性子との核反応によって発生するアルファ線とリチウム粒子が、がん細胞を殺傷します。2022年4月現在、健康保険の適応は切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌で、稼働中のBNCT治療施設は、南東北BNCT研究センター、大阪医科薬科大学関西BNCT共同医療センターです。

 東京女子医大放射線腫瘍科では、重粒子線治療の受診相談を行って、適応がある方は量子科学技術研究開発機構QST病院にご紹介しています。
 ご希望の方は、唐澤教授の外来をご予約下さい。


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